2016年4月には電力の自由化が、2017年4月にはガスの自由化が始まる。毎月必ず払わなくてはならない公共料金の支払額が少なくなれば、家計にとってうれしいことだ。ここ数日TVではほぼ毎日「ガス自由化・新規契約」の案内CFが流されている。 1年前の電力自由化の時には、ネットなどで調べて電気料金自体の差を検討してみた。東京圏で年間5,000kwの電力を使用した時の年間節約額は最大12,400円(月1,033円)~最小438円(月37円)とあまり安くならないし、電力の使用方法によっては、切り替えると高くなると判明した。がっかりしたが、各電力会社の親会社のサービスと一体化すると結構なポイントがたまることもわかってきた。例えば、東急電鉄の東急パワーサプライの場合、関連会社のイッツコムとのセット割引があったり、東急電鉄の乗車券(定期券含む)分にポイントが付与されたりしてトータルで見るとお得なプランが用意されていた。

エネルギーの自由化でリテンション

今まで電鉄会社と乗降客との関係は「私乗せる人、私乗る人」と云う具合に一方通行であり、電鉄会社は乗降客の個人情報など不要であった。ところが、電力の自由化によって双方向の関係性になってきて、乗降客である顧客情報が不可欠となってきている。 電気を使ってもらい、インターネットの顧客になってもらい、電車に乗ってもらうように東急グループの資産をセットすることによる割引(セット割り)で、東急電鉄の沿線に居住する人々を強固に囲い込むことが可能となった。その他の業態でも、auも情報通信(携帯電話・スマホ・Web)の会社を核にして、金融子会社(auウォレット)と電力子会社(auでんき)の連携によって電気料金のキャッシュバックを行い生活者の全生活を囲い込む状況となってきた。これからの様々な規制緩和・自由化によって、顧客と会社をつなぐ関係性がますます強くなると予想しているが、残念ながら各社とも初めての体験であったため、顧客との関係を強化する具体的施策がまだまだ少なく、2016年以降2017年のガス自由化までアプローチが見られなかった。せっかく電力の自由化で獲得した見込み顧客との関係性を強化するために、事業計画の根本に双方向性を高め関係性を強靭にするリテンション・マーケティングの活用が重要である。

筆者プロフィール
伊藤 博永(いとう ひろなが)
1993年3月  株式会社旭通信社(現:株式会社ADK)入社
2001年4月  株式会社価値総研取締役
2009年4月  株式会社ADKダイアログ代表取締役
2012年1月  アディック株式会社取締役(現任)
2015年9月  日本リテンション・マーケティング協会理事(現任)

お問合せ先 一般社団法人 日本リテンション・マーケティング協会事務局