(公財)日本生産性本部 サービス産業生産性協議会の発表した「2016年度 JCSI(日本版顧客満足度指数)調査結果」を見る機会があった。その中で面白い分析として「失望指標」という言葉を見つけた。「失望指標」とは「該当企業・ブランドを利用した際に幻滅・がっかりするような経験をどの程度したか」によって算出された指標とのことと説明してあった。

今まで「顧客満足度指数」にばかり目が行っていて、その反対の概念に気付かなかった。しかし、「顧客を失望させているとしたら、顧客が離れてしまうことは確実である」と考えると、リテンション・マーケティングを実施していく視点からすると最も重要な概念ではないかと気づいた。「顧客満足度向上」とか「顧客のロイヤリティを高める」という目標より「失望指標」の方がより顧客維持のためには重要な目標ではないかと意識し始めた。

顧客失望指標

その調査の中で「失望指標」が低い(失望経験が少ない)トップ20社のうち、通信販売企業が半数の10社ランクインするという結果であった。ランクインした企業は、健食サプリ系・通販コスメ系、家電販売系と幅広い業種と幅広い企業であった。そもそも通信販売企業は顧客と末永い関係性を築き、LTVを最大化さることが企業発展の最大の鍵であるため、10社のランクインは当然のことであろう。顧客と直接顔を合わせない通信販売だからこそ、気に入らなければすぐに他企業にスイッチされてしまうというハンデを持っている。そんな業態だからこそ他業態より「失望」に敏感になった結果、「あの会社なら・・・」という信頼感が必要不可欠と考え、失望させない施策を実行してきた結果、トップ20社内に10社も選出されたと判断している。 通信販売企業が顧客との関係性を真剣に考え、顧客に満足を与え、顧客を失望させないようなビジネスモデルを構築し、様々な施策を研究し実施してきた結果であろう。これからはより多くの企業で顧客との関係性が重視され、顧客個人との相互理解が必要となる時代が到来する。リテンション・マーケティングを基本戦略の一部として採用し実行していこうとする企業は、通信販売企業という先人の知恵・戦略・施策を参考にしながら、自社の得意分野や差別化できる分野を伝達していく事が重要である。その時、通信販売企業が実施してきたリアルな手法(既存の新聞・TV・チラシ)から、時代に合わせた伝達手段として、費用対効果が高く広範囲のターゲットに到達できるネットを活用していくことが可能な時代となってきている。

筆者プロフィール
伊藤 博永(いとう ひろなが)
1993年3月  株式会社旭通信社(現:株式会社ADK)入社
2001年4月  株式会社価値総研取締役
2009年4月  株式会社ADKダイアログ代表取締役
2012年1月  アディック株式会社取締役(現任)
2015年9月  日本リテンション・マーケティング協会理事(現任)

お問合せ先 一般社団法人 日本リテンション・マーケティング協会事務局