今月になっても、ロイヤルティについての思索は続いている。ロイヤルティを深く考え始めると、春頃に書いた「ロイヤルティとエンゲージメント」の話に繋がっていく。ロイヤルティを形成していくには、顧客と企業のエンゲージメントが重要なカギとなる。では、エンゲージメントとは何か。一昔前は従業員と企業、地域社会の商店会の寄り合いの様な話が主であり、閉ざされた空間の中での話として通用していた。人と人との結びつきを強固にしていくエンゲージメント活動には、お互いに顔を合わせコミュニケーションすることが重要であったからである。今は、デジタルとネットが全世界規模で繋がりを持っているため、エンゲージメントが閉ざされた空間ばかりでなく、開かれた空間でも機能するようになった。意味合いも「連帯、支援」と少しずつ拡大している。

ロイヤルティとエンゲージメント

エンゲージメントによってロイヤルティを形成していくには、単に顧客が満足する商品を提供し、反応してもらうだけでなく、顧客と企業が夢を共有し、その夢に向かって行動するという役割を担う必要がある。その時に不可欠となるのがコミュニケーションである。このコミュニケーションによって顧客と企業の方向性を一致させ、お互いにリスペクトしあえるような関係の構築が進めば、ロイヤルティ形成のスタートラインに立ったと云える。

エンゲージメントの完成形は「顧客と企業が相互理解の上で強く結びつき、それを行動している状態」であり、ロイヤルティの最終形も「顧客と企業が共有化した夢を一緒に作っていき、未来を共に創造していくこと」である。具体的には、エンゲージメントを活性化しロイヤルティ形成をしていくには、商品の持つ物語性や憧れとなってきた経緯を、顧客と企業が共に作り上げていき両者の未来を構築していくことである。このすべてを同時並行的かつ双方向で推進していくのがポイントである。その過程の中で、エンゲージメントとロイヤルティ形成は融合し、より強固な行動と心理の一体化が完成する。

全てがデジタル化される時代となれば、双方向のコミュニケーションはより安易に、安価に実現できる。自動車大手と家電大手が盛んに宣伝しいている「コネクッテッド」な常時接続の未来を目指すために、今あるネットのプラットフォームを活用し、顧客と企業が双方向に「つないで・見えて・深めて」いきながら「親密な関係」を創造していくことでスタートするべきである。既存のプラットフォームにあるネットツールやプロモーションを組み合わせてトライして、顧客と企業のリテンションを強化していくことがまず初めにやらねばならないステップであり、その後に来る常時接続の時代を見据えていくことが目指すべき道である。

筆者プロフィール
伊藤 博永(いとう ひろなが)
1993年3月  株式会社旭通信社(現:株式会社ADK)入社
2001年4月  株式会社価値総研取締役
2009年4月  株式会社ADKダイアログ代表取締役
2012年1月  アディック株式会社取締役(現任)
2015年9月  日本リテンション・マーケティング協会理事(現任)

お問合せ先 一般社団法人 日本リテンション・マーケティング協会事務局