近頃、D2Cが話題になっている。馴染みのある言葉のようでもあり、新しい言葉のようでもある。頭の深いところでザワザワし、よくわからないことにイラついた。そこで、イライラの原因を探っていくことにした。

ビジネスやマーケティングの業界には「B2B・B2C・C2C」という言葉が通用しており、B2Bは企業から企業へ産業材を販売する形態、B2Cは企業から消費者へ消費財を販売する形態であり、C2Cは消費者から消費者へ所有物を販売する形態を表していた。商流と金流を表すビジネスモデルを表現する言葉であった。そんな基礎がある頭の中に、いきなりD2Cが現れ、新しい販売の方式といわれたので、頭の中はパニック状態となった。

D2C って何

今年の2月中旬に福岡で「 D2Cサミット 2020」が開催され、友人数人がスピーカーやモデレーターとして登壇していた。現在使われているD2Cの意味を知りたくて、友人たちに教えを請い若干ながら理解が進みつつある。まだまだ本質や神髄まで行きついていないが、私自身のイライラを解消し、同じように悩んでいる人たちに向けて整理してみた。

まず、今言われているD2Cという言葉は、ビジネスモデルではないことを肝に銘ずる必要があるそうだ。ビジネスモデルでないならば何か?このサミットでD2Cは「事業の方向と事業の構造」そのものだそうだ。「方向と構造」と言われても、まだよく理解できないが、とりあえず論を進めていく。まず「方向」は、リアルな店舗ではないことがスタートである。実店舗にはにない売り場を作ることと、店員の販売話法ではないような情報提供が必要ということ。つまり、顧客の価値観を直接受け取り、お客の立場で反応すること。この二つが方向の柱になる。

「構造」については、今までと大きく変わり、売り手と買い手が直接結びつくような形がD2Cであるしている。売り手は通販企業のような大きなものでも、個人のような小さなものでもOKであり、ダイレクトにモノやことを提供していることがベースとなれば良いということである。もう一つは、売り手と買い手の間に中間業者が入らないこと。今までのように、コミュニケーションや販売促進を支援していた広告会社を入れないで、売り手と買い手がOne to Oneでつながること。

この「方向と構造」の変化によって、買い手はターゲットから商品を使ってくれる仲間やサポーターへポジションが変化し、大きな意味でのステークホルダーになってきたと考えることが重要である。今、ファンベースやリテンションベースのマーケティングが注目を集めているが、D2Cを活用する神髄はそのあたりにありそうだ。 

なお、弊協会で実施している実証実験については、ツールの発送は終了し顧客からの反応を待っているが、コロナ禍により顧客反応が遅くなっており、集計・分析作業も進んでいないのが現状である。

筆者プロフィール
伊藤 博永(いとう ひろなが)
1993年3月  株式会社旭通信社(現:株式会社ADK)入社
2001年4月  株式会社価値総研取締役
2009年4月  株式会社ADKダイアログ代表取締役
2012年1月  アディック株式会社取締役(現任)
2015年9月  日本リテンション・マーケティング協会理事(現任)

お問合せ先 一般社団法人 日本リテンション・マーケティング協会事務局