弊協会の業務もコロナ禍のために大きく変化している。3月から展開している実証実験も、顧客層が不活性の状態であり、集計分析作業もチーム内で滞っている。セミナーやワークショップについてもオンラインでの実施である。周りの仕事仲間に聞いても、外出自粛のせいでなんとなく不機嫌。今までは「ワイワイ、ガヤガヤ」と寄り集まっては話をしていたのが、慣れないリモートワークで情報の質と密度が希薄化したせいだろう。昭和・平成の時代に仕事をしてきた経験が邪魔をしている。

 大きな変化が起こっている。コロナ前、コロナ禍中、コロナ後と分けて考えるとわかりやすい。コロナ後については国際関係、政治、経済、都市、生き方等が複合的に影響しあい、地殻変動的な変化が起こるといわれている。国際関係、政治、経済、都市、生き方等は専門外なので、それぞれの専門家の話に耳を傾けてもらいたい。今回は、働き方とマーケティングに関して話を進めたい。

ウィズコロナ

働き方は、一億総活躍社会実現に向けたチャレンジとして発案され、平成28年に発表、平成30年に「働き方改革」として法制化された。長時間労働の削減、テレワークの推奨、生産性の向上、社員間の格差の解消等を実施することで多様な働き方を可能にしようとするものであった。しかし、企業の現状維持バイアスの影響でなかなか改革は進展していかなかった。そこへ、100年に一度といわれている今回のコロナウィルス襲来により、一挙にテレワーク、オンライン化、残業削減、時短勤務が強要された。働き方については、すでに大きな変化が生まれビジネス界に定着し始めているといえる。

一方、マーケティングに関しては「不要不急」と「三密回避」の2つがキーワードとなるだろう。コロナが流行し始めた当初、盛んに「不要不急」を戒める言葉が氾濫し、人々はコロナ前の行動や生き方に「不要不急」と「三密状態」がいかに多かったに気づいてしまった。しかし、この「不要不急」が社会を活性化させ、経済を拡大してきた原動力でもあったことも事実である。人々の欲望を刺激してきた「不要不急」・・・例えば旅行であったり、会食であったり、観劇・鑑賞であったり、ブランドであったり・・・は人々に夢と楽しみとゆとりを与えるものであり、生きていくために不可欠な活動であった。人々が「不要不急」と「三密回避」を意識し行動を変え始めたら、大量集客・大量消費という「三密状態」による効率最大化を目指していたマーケティングは大きく変化してしまう。ウィズコロナによる「ニューノーマル」という時代の渦に巻き込まれ、マーケッターの立ち位置がわからなくなってくる。迷いの中で答えを探すとしたら、企業と顧客との関係性を軸としたリテンション・マーケティングという立ち位置を見つけることである。

筆者プロフィール
伊藤 博永(いとう ひろなが)
1993年3月  株式会社旭通信社(現:株式会社ADK)入社
2001年4月  株式会社価値総研取締役
2009年4月  株式会社ADKダイアログ代表取締役
2012年1月  アディック株式会社取締役(現任)
2015年9月  日本リテンション・マーケティング協会理事(現任)

お問合せ先 一般社団法人 日本リテンション・マーケティング協会事務局