我が国のインターネット動画の市場規模は、あるデータでは2013年に132億円を形成し、2017年には5倍以上の640億円に達すると予測している。別のデータでは2016年の市場規模は824億円であり、2022年には約3000億円に成長するとしている。集計・分析する範囲や方法が違うためどちらのデータが正しいとは判断できないが、インターネット動画市場は急拡大しており、急成長を遂げることは確実であろう。

動画広告から動画マーケティングへ

動画の特徴は1分間の視聴で、文字数に換算すると180万文字、この文字数を収納するHPのページ数は800頁に相当している。この膨大な情報を動画と音声を用い、1分間で伝達できるツールとして脚光を浴びているわけである。動画を発信している企業の大多数は、「興味関心喚起→集客→会員化→購買→活性化→関係強化」のステップで運用しており、具体的な方法としては2~3秒の動画メールで興味関心をあおり、その後にLP・HPへ自動的に遷移するようにして、会員化へ結び付けるような運用をしている。

 その中でメール広告に限ってもう少し詳しく見ていくと、動画を使用したメール広告の受容度は、テキストメールや静止画メールと比較して1.5倍から2倍程度受容度が高くなっており、動画メールに優位性があるようだ。動画メールで使う動画広告を制作している担当者に聞くと、現在の動画広告の制作目的が「ブランディング」、「来店促進」、「購入実現」、「関係性強化」と多岐に渡っているため、よく使われている反応率とかコンバージョン率を共通した指標として活用できないことが、動画メールの普及拡大のネックになっていると語っていた。

また、運用し始めて日が浅いために、動画広告がメール・LP・HP・SNSの枠内で独立した形で制作されてしまうため、それぞれの動画広告が勝手な働きをし、連動したシナジー効果が発揮できていないことが最大の課題であると悩みを打ち明けられた。 今の10代の人たちは、情報収集する時に検索エンジンを使うのでなくSNSを活用していると云われており、ネットの中に大きな地殻変動が起きてきている。この動きから推察していくと、2017年は動画広告がメール・LP・HP・SNSの枠内で単独に動いていくのではなく、それぞれが連動してシナジー効果を発揮させるような、戦略性を持った動画マーケティングがスタートしていく元年となると思われる。

筆者プロフィール
伊藤 博永(いとう ひろなが)
1993年3月  株式会社旭通信社(現:株式会社ADK)入社
2001年4月  株式会社価値総研取締役
2009年4月  株式会社ADKダイアログ代表取締役
2012年1月  アディック株式会社取締役(現任)
2015年9月  日本リテンション・マーケティング協会理事(現任)

お問合せ先 一般社団法人 日本リテンション・マーケティング協会事務局