サブスクリプションが盛り上げっている。顧客がモノの保有者から、モノの利用者に変化していく流れが止まらない。サブスクモデルは今までも存在し、新聞、雑誌、映画、音楽、通販の定期購読・定期視聴・定期購入が主なものであった。普及し始めたのはスマホのアプリやPCのソフトウェアのような形のない商品が登場してきてからである。近年はコーヒー、自動車、アパレルなどのモノを扱うビジネスへ拡大し、今年の7月には大手化粧品会社からサブスクモデル専用の化粧品ブランドも登場している。消費者から見れば「モノやサービスの所有に対価を払う」から、「モノやサービスの利用に対価を払う」に変化している。

サブスククリプション

利益の回収方法も、「モノを提供」し単回で回収するのではなく、「利用価値を提供」することによって顧客と繋がり続け、長期に渡って回収する方法になっている。顧客が求める価値は常に変化するので、変化に合わせた価値を提供できないと飽きられてしまう。顧客がいま何を求めているのか知り続けることが、大切になったと企業が気づき、意識や行動のデータがリアルタイムに収集できることも、盛り上がっている一つの要因であろう。データを活用し、企業としての差別化を図ることが新しい価値を提供するベースとなるため、データを読み込み、分析するマーケティング能力が今まで以上に重要視されてきている。顧客にとって常に最適な「利用価値」を提供し、期待を上回る価値を提供し続けることが、さらにより単価の高い「モノやサービス」を契約してもらいアップセルも達成できる。より優れた利用価値を継続的に提供し、価値を高めながら価値に対応した対価を提示し、販売高の向上を図っている。 サブスクモデルを始めると、顧客と繋がり続ける事が常態となるため、直近の細かな情報も取得できるようになり、企業にとって大きなメリットとなる。顧客の声を聴きながら、着実に商品開発や販促施策が運用できるため、閉塞感の出始めた高度成長期モデルの変革モデルとして期待されている。今までは企業側には顧客の直近の情報がなかったため、「今、誰が、何のために」買って、「どのように利用しているのか」が分からなかったため、マーケティングが販売部門のサポートと軽視される傾向があった。しかし、顧客の直近の情報を捉えられるものとして位置づけると意味が大きく変化する。「直近の顧客の意向⇒利用による価値の変化⇒求める次の利用価値」を常時把握していくことができるマーケティング手法と考えれば、マーケティング5.0の世界が見えてくる。顧客との関係性を強化しながら顧客を囲い込み、変化を活用するリテンションマーケティングがサブスクモデルには不可欠である。日本のビジネスを変革させ、新しい地平を目指すことができるマーケティングの方法論として本格活用が期待されている。

筆者プロフィール
伊藤 博永(いとう ひろなが)
1993年3月  株式会社旭通信社(現:株式会社ADK)入社
2001年4月  株式会社価値総研取締役
2009年4月  株式会社ADKダイアログ代表取締役
2012年1月  アディック株式会社取締役(現任)
2015年9月  日本リテンション・マーケティング協会理事(現任)

お問合せ先 一般社団法人 日本リテンション・マーケティング協会事務局