新規顧客獲得の特効薬として「だけの3原則」をクライアントに語っていた時代があった。顧客に対して限定されたお得感を畳みかけることによって、購入意欲を強く刺激する事を狙った原則である。一つ目の「だけ」は、こんなチャンスは「今だけ」ですよ!と語りかけ購入を先延ばしさせないこと。二つ目の「だけ」は顧客に対して「ここだけ」ですよ!と当該の媒体に接触した幸運を自覚させること。最後の「だけ」は「あなただけ」がチャンスを得られるのですよ!と云う選民意識を持たせること。この「今だけ、ここだけ、あなただけ」の3つの原則を顧客にささやきかけることによって顧客のお得感を最大化し、購入実現時期を短縮化することが新規顧客獲得の基本的なノウハウであると伝えてきた。近頃はこの「だけの3原則」が通用しなくなっている。「今だけ」「ここだけ」は折込チラシやTV通販で盛んに露出されているが、残念ながら同じ情報がネットでは恒常的に露出されてしまっている。「あなただけ」に関してもメールでささやき続けているが、ホームページに行けば誰でもOKの状態である。「だけの3原則」が壊れ始めた現代、新規顧客獲得の効率が極めて悪くなってきている。

新しい袋に・・・

一方、既存顧客活性化を狙えば、顧客の個人情報を握っているために自由自在に「だけの3原則」を活用できる。商品の無くなる時期に「今だけ」セールを打つ、「ここだけ」「あなただけ」感を創出するためには顧客の誕生日などのメモリアルデーにダイレクトメールを送付したり、メールを送信したりすることで解決できる。勿論、顧客の個人データの収集・活用や顧客全体の購入パターン分析などを実施しておくような事前の準備は不可欠である。「だけの3原則」の役割は、新規顧客獲得から既存顧客活性化へ舵を切る時代に変化していると云える。 技術の進歩や時代の変化は10年ひと昔という言葉では到底追いつかないほどになっている。21世紀当初はドッグイヤーと云う言葉でスピード化を語っていたが、今ではよりスピードの速いラットイヤーに変わっており、時代の流れは加速している。技術の進歩が社会、ビジネス構造、ビジネス形態を瞬時に変化させてしまうのが今の時代。10年前に誰が今日のスマホの普及や、ECによるオムニチャネル化、ポイント制を含む疑似通貨化、暗号通貨の拡大を予測しただろうか。2018年の正月1カ月間くらいは新しい技術を想像し、技術による変化を夢想し、時代の変化に適合させたビジネスモデルを創出していく覚悟で過ごす期間として活用してみたらいかがだろうか。今までの古くなった成功体験を古い袋に封印し、新しい時代に合った新しい袋を見つけることに注力してみる。今年はいろいろな新しい袋が生まれてくる年になるような気がしている。

筆者プロフィール
伊藤 博永(いとう ひろなが)
1993年3月  株式会社旭通信社(現:株式会社ADK)入社
2001年4月  株式会社価値総研取締役
2009年4月  株式会社ADKダイアログ代表取締役
2012年1月  アディック株式会社取締役(現任)
2015年9月  日本リテンション・マーケティング協会理事(現任)

お問合せ先 一般社団法人 日本リテンション・マーケティング協会事務局