今年の夏、ロイヤルティについて書いた時「概念は分かるけど何から始めたらよいか分からない。」とのお問い合わせをいただいた。ロイヤルティについてはリテンションマーケティング協会が日本消費者行動研究学会と共同でワークショップを実施し、約3年間に渡りロイヤルティ構造の研究や協会参加企業のデータ分析等の研究を続けているが、まだまだ明確になっていない事も多い。ワークショップの結論ではないし、リテンションマーケティング協会の見解でもないが、自分の中にロイヤルティが生まれる瞬間はいつなのかを個人的に検証してみた。
「名前や由来を知った時?イイナと思った時?もっと知りたくなった時?買った時?」この4段階の変化を考えたところ、私の場合は最終段階でロイヤルティが形成されていると感じた。3段階目まで徐々に好きになっていくわけであるが、まだロイヤルティと云われるレベルまで行きついていないと感じている。ブランドに対してお金を払い、使用して満足した時にロイヤルティが形成されるのではと思う。勿論、買い物の際の店舗の佇まいや店員への満足感がロイヤルティ形成には大きな要素となる。
再びロイヤルティを考える
未購入客と既購入客に分けて考えてみよう。未購入客に対して、企業からのDMやメールなどの接触があり、その内容が未購入客の期待を超えれば認知と好意度は上がる。購入に至る過程を考えると、商品のデザインや機能が期待を上回り、店舗の佇まいと接客が気に入り、その商品の世界観が好ましければ、認知と好意度の次の段階である購入に至ると考える。既購入客の場合にはDMやメールはその内容が既存顧客の期待を上回ればロイヤルティを高める効果はある。自分も買うし、友人や知人に購入を薦める行為も出現する。
ここまで考えた時、ブランドロイヤルティという言葉を「ブランド構築とロイヤルティ形成」の2つに分けて整理する必要がある事に気づいた。広告代理店に勤めていた時、ブランド構築はコミュニケーション費用がかかるためお金になる仕事であったが、ロイヤルティ形成については、心の中の問題なので代理店としては手の施しようがなく、様々な調査を実施して心理変容を把握する事に留まっていた。ブランド構築については「認知⇒好意⇒購買動機付け」のステップを踏みなが進展すると考えていたから、名前を告知し、好きになってもらうために特長と機能性の良さを伝え、欲しいという購買動機付けに進んで行った。購入が実現したところで評価を高める施策を実行すればロイヤルティがより強化できた。その後は購入客の反応を把握し、到達できなかった要素を改善していく。この繰り返しを行っていけば、自然にロイヤルティは強固なものになると考え実践していった。これからは顧客との様々なリテンションを行使してロイヤルティ形成を図っていく事が必須となる。
筆者プロフィール
伊藤 博永(いとう ひろなが)
1993年3月 株式会社旭通信社(現:株式会社ADK)入社
2001年4月 株式会社価値総研取締役
2009年4月 株式会社ADKダイアログ代表取締役
2012年1月 アディック株式会社取締役(現任)
2015年9月 日本リテンション・マーケティング協会理事(現任)
お問合せ先 一般社団法人 日本リテンション・マーケティング協会事務局