昨年末にブランディング(ブランド構築)とロイヤルティ形成の話を書いた。書いた後で消化不良の感じがしたので、もう少し考えてみた。これまで日本では、ブランドロイヤルティと云う言葉でブランド構築とロイヤルティ形成をひとくくりにしていた。長年、広告業界で勤務していたため、ブランディングについてはいろいろと経験し、いろいろなお客様のブランドを作ってきた。しかし、ロイヤルティについては広告・販促・イベント等の様々な施策の結果としてしか見ていなかった。今回はブランド構築とロイヤルティ形成に分けて考えてみたい。
とは言っても厄介なのがブランド構築もロイヤルティ形成も最終ゴールは継続して購入してもらうことである。最終ゴールが同じなので、つい同一のことと考えてしまうのではないだろうか?どちらも消費者の行動形態としては「知っている、購入する、購入を薦める」状態であり、心理としても「ブランドが好き、誇りに思う、使用している自分が好き」なので継続していくと考えられる。ブランド構築とロイヤルティ形成に共通して関与しているのは、企業の発信と顧客の受容である。簡潔にまとめると企業と顧客とのエンゲージメントと考えている。
エンゲージメント
エンゲージメントと云うと、また新しい言葉が出てきたと思われるだろうが、日本語では「絆、約束、繋がり・・・」のことである。昔は企業組織内や商店街などのように閉じた空間でしか使用できなかった。例えば、「社内エンゲージメントの強化」と云うように使用していたが、SNS、メール等が発達した現在では、企業の受発信も個人の受発信も瞬時にできるようになってきている。グローバルに企業と消費者のコミュニケーションがたやすく実行できるようになってきた事が、エンゲージメントと云う言葉が注目されている要因であろう。
では、ブランドの魅力をしっかりと伝え、ロイヤルティを形成するエンゲージメントとは何なのか?具体的に考えていくと「デジタルの向こう側」で書いたように、デジタルとリアルの融合ではないかと思っている。ブランド構築にはデジタルで様々なアプローチを行い、認知・購入・推奨の基盤が出来たところで、リアルな世界で人間の持つ五感をフルに使っての感覚醸成を行い、好きになってもらいながらロイヤルティ形成をしていく。
これからのマーケティングに必要な事は、デジタルで広くブランド構築を行いながら、顧客に対して寄り添うようにエンゲージメントを高め、ロイヤルティ形成をしていく事。つまり、顧客との接点を可能な限り発見しながら顧客を追いかける事である。どのようなエンゲージメントがロイヤルティ形成に有効なのか?意思疎通に可能な場所はどこなのか?を見極めながら進める事でロイヤルティ形成が達成できる。
筆者プロフィール
伊藤 博永(いとう ひろなが)
1993年3月 株式会社旭通信社(現:株式会社ADK)入社
2001年4月 株式会社価値総研取締役
2009年4月 株式会社ADKダイアログ代表取締役
2012年1月 アディック株式会社取締役(現任)
2015年9月 日本リテンション・マーケティング協会理事(現任)
お問合せ先 一般社団法人 日本リテンション・マーケティング協会事務局