先月、加熱式たばこ(ベイパーたばこと云うらしい)を買った。紙巻タバコに比べて、副流煙が少なめでニオイも気になりにくく、有害物質も9割ほど低減できるという宣伝文句にひかれたのと、オフィスで紙巻きたばこの喫煙が出来なくなったことが購入の理由である。喫煙の習慣はもう40年以上続いているが、今までたばこメーカーと個人情報をやり取りするとは思っていなかった。加熱式たばこを割引価格で購入するためには、当該のたばこ会社のサイトを訪れて個人情報を登録することが必要となる。個人情報を登録すると3,000円程度割引される(約30%の割引)ため、お得感が増し初回購入の大きな動機付けとなった。

加熱式たばこのこと

今まで、たばこは自販機で買うもの、たまにコンビニやたばこ店で買うことがほとんどであったため、たばこ会社に個人情報を入力し送信した時、とても奇異な感じがした。加熱式たばこを買った時に、2020年の東京オリンピック・パラリンピックでの飲食店の全面禁煙化反対の署名活動にサインを要請された。政府が推進している2020年の東京オリンピック・パラリンピック開催時の受動喫煙防止の強化策についての喫煙者サイド/飲食店サイドからの規制緩和の署名運動である。

周りを見回しても、たばこの健康被害が喧伝され、最近ではエンタテイメントの分野でも喫煙シーンのある映画やドラマは成人指定にするようにWHOから勧告される時代となっている。人口減少社会の中で喫煙人口も減少し、たばこ市場も縮小していく。そんな中で、たばこメーカーは生き残りをかけて受動喫煙などの被害の少ないたばこを開発し、喫煙の害をすこしでも少なくする方向へ動いてきている。先行した加熱たばこメーカーのユーザー数は2017年3月で100万人を超えたとの記事も出ていた。 たばこ会社は健康問題に配慮すればするほど、新規喫煙者の獲得が困難となってきているから、今まで獲得してきた喫煙者を維持する方向へ舵を切り始めたと思われる。加熱たばこついても、このままの人気が続けば、すぐに他社から類似商品が発売されてしまう。喫煙者の個人情報を早めにしっかり囲い込んで、ネット上でメルマガ・HPの学習関係をeラーニング等で構築し、獲得した顧客の離反を防ごうとしている。ここでもネットを介在したリテンション・マーケティングが生きている。

筆者プロフィール
伊藤 博永(いとう ひろなが)
1993年3月  株式会社旭通信社(現:株式会社ADK)入社
2001年4月  株式会社価値総研取締役
2009年4月  株式会社ADKダイアログ代表取締役
2012年1月  アディック株式会社取締役(現任)
2015年9月  日本リテンション・マーケティング協会理事(現任)

お問合せ先 一般社団法人 日本リテンション・マーケティング協会事務局