近頃、通販コスメの商品開発や販売戦略について相談を受けることがある。一昔前は団塊世代がシニア年代に大量に流入していたため、新規のエイジングケア商品を開発する事とシニア顧客を効率よく刈り取っていく事が成功の鍵であり、新規獲得コストとかコンバージョン率とかをベースに経営戦略を構築すれば上手くいっていた。しかし、団塊世代が後期高齢者に区分される年代となってくると、加齢に対する抵抗欲求も低下するし、海外旅行等のアウトドア活動も体力的に困難になり、使用する「お金」が減少してきている。おまけに、消費の主力であった若年世代が少なくなり、ますます「お金」は使われなくなっている。
AI、ネット、フィンテックの普及によって、金融業界でも店舗数削減や窓口人員削減というニュースがマスコミ上で話題になっている。「お金」の概念も流通系・交通系・サーバー系の電子マネーの普及と共通化、およびポイント制の疑似通貨化により大きく変化している。氏名の書かれていない現金では不可能であった顧客の出納状況を把握し、マネジメントできる時代が到来した。
「お金」でマネジメントする?
マネジメントの具体的事例と方向性を表しているのが中国のマネー事情だ。現在の中国は現金でなくスマホのQRコードやカードで決済をするキャッシュレス社会になっている。キャッシュレスに投資する会社は何を求めているのか。その答えは「ビッグデータ」にある。中国IT業界ではスマホやカードによる決済を通じて収集される大量のデータを活用し、次々と革新的サービスを生み出しつつある。もう一つのマネジメントの流れが、個人の信用度を確認するための「支払い履歴(ホワイトおよびブラック情報)、勤務先、居住タイプ(マイカーや住宅など資産の保有状況)、学歴」などを収集し、個人の信用度をポイント化して与信枠や各種許認可の際の指標にしていると云われている。あくまでも噂の範囲を超えないが、この信用度情報が中国の行政機関が取得し活用し始めているとささやかれている。
この流れに沿って我が国の状況を考えると、まず一番にマイナンバーカードの官民連携の利用拡大がある。今後、規制緩和が進み技術進化が伴えば、ビジネスルールの変化が先導し、その後追いで法改正が起こり新たな事業機会が創出され、新規のプレイヤーが続々と参入するようになるであろう。今まで競合と捉えていなかった企業が、明日には競合として目の前に立ちふさがる状況が起こってくる。その時、顧客重視のビッグデータ分析や、顧客とのリテンションをキーとした戦略を採らないと時代の流れに乗り遅れてしまう。技術の進化、人口の変化、制度の変化が矢継ぎ早に起きている現在、データ重視を志向していかなければ企業が生き残ることが出来なくなった。
筆者プロフィール
伊藤 博永(いとう ひろなが)
1993年3月 株式会社旭通信社(現:株式会社ADK)入社
2001年4月 株式会社価値総研取締役
2009年4月 株式会社ADKダイアログ代表取締役
2012年1月 アディック株式会社取締役(現任)
2015年9月 日本リテンション・マーケティング協会理事(現任)
お問合せ先 一般社団法人 日本リテンション・マーケティング協会事務局