2018年の終わり頃からBeyond Digitalと云う言葉がマーケティング業界でちらほらと語られるようになった。広告コピー的に和訳すれば「デジタルンの向こうに!」である。なんだか自動車メーカーの広告コピーの様だが、境界線を越えて行く世界観の様なものを指していると考えている。抽象的な世界観なので具体的な事例を提示するのは難しいが、簡単に言えばデジタルで集客し購入に至らせるには、今のようにデジタルで完結させるのではなく、もっといろいろな道がある事を示しているようだ。大手広告会社もこの考え方をもとに、生活者の接するデジタルとリアルの両立を説き始めている。認知から集客・動機づけ・購買のすべてがデジタルのみで完結してしまう道もあれば、最終的な動機づけ・購買をリアルな媒体や場所に結びつける道もある。このデジタルとリアルの融合が「デジタルの向こうに!」の世界であるようだ。

Beyond Digital

デジタルとリアル店舗との融合は今はやりのオムニチャネルで実現するし、デジタルと印刷との融合はビッグデータで抽出された有望顧客にDMやチラシを届けることで実現可能である。今の時代「デジタルの向こうに!」を見据えているのは出版業界や新聞業界ではないかと思っている。顧客である読者にメールでイベントや出版物を告知し、リアルな場所でイベント開催をし、会場で出版物を販売。最後にイベントの新規来場者に再びメールで次回のイベントや新刊や新聞を案内する。効果的な循環で顧客を獲得し、既存顧客にも飽きられない情報を提供し続け、リテンションを強化していく。時代の最先端情報を提供している出版社や新聞社ならではの展開と感心している。

2019年、社会はデジタルテクノロジーの進化と浸透により大きな変化の真っただ中にいる。AI・ビッグデータ・デジタルエコノミー等の拡大と、SNSの普及・人口減少・限界マーケットによる消費者の変化が、既存のビジネスモデルに変化を迫っている。20世紀型ビジネスモデルでの正解が、今も正解とは限らない時代。新しい概念やテクノロジーに適合させる方法は、既存の仕組みを上手に組み合わせ、小さな失敗を重ねながらもビジネスモデルを構築していき、様々な状況に順応しながら前に進んでいく事である。予測不能な毎日が続く環境は、ネットビジネスに携わるビジネスパーソンにプレッシャーを与えるが、前に向かって進む事を念頭に置き、新しい時代に向かってマインドセットする事が成否を分ける。

日々刻々と変わる状況に前向きに、デジタルとリアルの融合を積極的に切り拓き、ブランドロイヤルティの向上と販売の向上を目指していく事。企業と消費者をダイレクトにつなぐマーケティング戦略が不可欠であると認識し、2019年の扉が開いた今こそ、生活者と企業を結ぶリテンションマーケティングに挑戦し、新しい地平を切り拓いていくビジョンが大切である。

筆者プロフィール
伊藤 博永(いとう ひろなが)
1993年3月  株式会社旭通信社(現:株式会社ADK)入社
2001年4月  株式会社価値総研取締役
2009年4月  株式会社ADKダイアログ代表取締役
2012年1月  アディック株式会社取締役(現任)
2015年9月  日本リテンション・マーケティング協会理事(現任)

お問合せ先 一般社団法人 日本リテンション・マーケティング協会事務局