一般社団法人)日本リテンション・マーケティング協会が発表した「リテンション状況消費者調査2017」を読み込んでみた。この調査は心理面と実態面の両面からアプローチし、使用理由や関心度に差があるのか?と云う心理面と、商品の違いによって使用期間が違うのか?と云う実態面を明らかにすることをメインの目的としている。 調査の項目を詳細にみると、生活者の消費行動に関する全体的な意識調査の他に、嗜好品10品目の使用率、使用期間、関心度、リテンション率の実態を明らかにすることと、それらの使用理由、満足度、継続理由、スイッチング状況、変更理由等の意識を把握することが可能となっている。

自分らしさ!が大切な生活者

全体を概括すると、生活者は「自分に正直。行動は慎重(76%)」が主流であり、使用商品の継続理由や銘柄変更については、「使い慣れている(46%)」、「安心感がある(23%)」「親しみがある(14%)」と極めて情緒的に行動していることが分かった。今回の調査において、商品を取り巻く様々な情報を積極的に収集し、自分の嗜好に合っているかを慎重に判断しているという生活者の姿が浮かび上がってきた。「情報収集、比較検討、自分の嗜好に合った自分らしい消費」が大切が今の生活者像であろう。

使用銘柄を変更するいわゆるスイッチングについても、現状に大きな不満をいだいているというよりは、「気分を変えたい」との情緒的な理由を答えている。スイッチングにより新規顧客を獲得する際には、その「気分を変えたい」をいかに捉えて、変えた結果どのような「気分」を味わえるのかを想像させることが重要であるといえる。顧客の維持・育成をミッションとしたリテンション・マーケティング領域においても、常に既存顧客の「気分」を自社に引き寄せておき、他社へのスィッチングを起こさせないことが必須であることが分かった。 「商品に関する情報、商品の特性、自分の気分とのマッチング」と云う三題噺を考えると、情報はネットの中に拡散・充満させ、特性はLPやHPで納得させ、気分とのマッチングは動画広告をSNSで料理することができる。今の時代、情報化社会、飽和市場と言われているが、顧客それぞれに自分らしい消費行動を目指してもらう事はネットを活用していけば達成できる。
 今後、顧客との関係性強化を重要視する企業にとっては示唆にとんだ調査結果となっており、企業現場におけるマーケティング活動で活用できる調査である。詳細データにご興味のある方は、協会にご連絡を!

筆者プロフィール
伊藤 博永(いとう ひろなが)
1993年3月  株式会社旭通信社(現:株式会社ADK)入社
2001年4月  株式会社価値総研取締役
2009年4月  株式会社ADKダイアログ代表取締役
2012年1月  アディック株式会社取締役(現任)
2015年9月  日本リテンション・マーケティング協会理事(現任)

お問合せ先 一般社団法人 日本リテンション・マーケティング協会事務局